結果を出す人は睡眠を大切にする。良質な睡眠をとるための秘訣

人生におけるパフォーマンスを上げるために睡眠は非常に重要なウエイトを占める。

必要な時間しっかりと眠り、日中最大のパフォーマンスを発揮している人と、質の悪い眠りで日中のパフォーマンスが落ちている人とでは、わずか1日でも差が出る。人生という長い期間ともなれば途方もない差がつくのは当然だ。

特に差が出るのが歳をとってからだ。

若いうちは、質の悪い睡眠で日中に眠気やだるさが残っても「身体的な若さ」である程度は補うことができる。

しかし歳をとってくるとそうはいかなくなってくる。

早い人は30を超えたあたりから、遅い人でも40くらいには若い時のようには体が動かないことを実感するだろう。そこで質の良い睡眠をとっているかどうかは大きな差になってくる。

さらに言えば、良質な睡眠が取れていると高齢になってからの脳の衰えも軽減する。毎日脳をしっかりと寝かせてメンテナンスしている人と、脳のメンテナンスを何十年もおろそかにしてきた人では、脳の劣化度合いが変わってくるのは当然だ。脳がきちんとはたらく期間が数年、場合によっては10年以上のレベルで変わってくるのだ。

賢い人はこの事に気付き、睡眠を大切にするようになる。

では睡眠の質をあげるのに気をつけるべきことはなんだろうか。

規則正しい生活・十分な睡眠時間が大前提

まず超基本的なこととして、規則正しい生活は絶対条件だ。

昔は経営者や成功者のイメージは、高級キャバクラで深夜までどんちゃん騒ぎというものだったかもしれない。

しかし最近はむしろ規則正しい生活やしっかりと睡眠時間を確保する事を意識している方が多い。もちろん付き合いでたまにハメを外すのは悪いことではないが、それを習慣にしている人で長期間実績を出し続けられている人は少ない。

その理由は明らかで、規則正しい生活を続け、毎日の睡眠時間を十分にとった方が結果を出せるからだ。

多少の誤差はあっても構わないが、就寝時間、起床時間はある程度一定にしよう。

人間には体内時計が備わっている。体内リズム(サーカディアンリズム)と呼ばれるこの機能は私たちが周期的に活動⇔休息を続けるに当たって大事なものである。朝起きて、一定時間活動して、しばらくしたら自然と眠気がきて心身を休める。このリズムに従っているからこそ、私たちは過度に疲労を溜めることなく高パフォーマンスを発揮し続けることができる。

海外旅行で時差のある国に行くと体調を崩す方は多い。特に仕事での出張だとだるさが抜けずに思うような成果があげられないこともある。

これは海外への移動で急に覚醒⇔睡眠の一定だったリズムが崩れ、体内時計が急に揺さぶられてしまうからだ。体内時計が狂えば寝る時間になってもなかなか体が睡眠体制になれず、質の良い睡眠を取ることが困難になる。

夜更かしなどをすることが多く、毎日就寝・起床時間が異なるような人は、極端に言えば毎日時差ボケしているようなものだ。

毎日このような状態だとそれに慣れてしまって違和感を感じなくなっているかもしれないが、体内時計は狂いっぱなしで、毎日だるさとボーっとした感じが続いており、パフォーマンス低下が持続している。

程度就寝・起床時間が一定になっていれば、体内時計も一定のリズムで覚醒・就寝のリズムを続けられるようになる。そうなると夜になったら自然と眠気がきて、質の良い睡眠が取れるようになる。

また睡眠時間を十分とることも重要だ。どんなに屈強な人でも、また優秀な人でも疲労がたまらない人はいない。

溜まった疲労は睡眠で回復させるしかないのだ。特に脳の疲労は睡眠でしか回復されない。

質の良い睡眠を取れば睡眠時間は過度に長くする必要はないが、できれば7〜8時間ほどはとることをお勧めする。

確かに中には睡眠時間が4時間くらいでも大丈夫なショートスリーパーの方も少数いる。しかし自分が短時間の睡眠で確実に疲れが取れているという確信がなければ、過度に短い睡眠にすべきではない。

本当のショートスリーパーでもないのに無理して短時間睡眠を続けると、脳を酷使するわけだから結果早死にする。

特に若い時は注意が必要だ。若い時は無理が効くため、短時間睡眠でも何とか頑張れてしまう人がいる。でもそれが「本当に無理していないのか」「本当に眠気やだるさはないのか」はしっかりと見極め、無理せず必要な睡眠は取らないといけない。

覚醒時は適度なストレスをかける

起きてから就寝するまでの時間、多くの方は学校に行ったり仕事をしたりと何らかの活動をしていると思う。

これは案外重要な事で、活動によって心身に適度なストレスをかけることで、適度に脳や体が疲労し、質の良い睡眠が取れるようになる。

睡眠は心身の疲れを回復させる作業である以上、全く疲れていなければそもそも眠ることはできない。十分な睡眠をとった直後にまたぐっすりと眠れる人はいないだろう。

そのため、日中は適度に頭を使い、適度に身体を動かすことが質の良い睡眠には必要だ。

しかし負荷をかければかけるほどいいわけではないのには注意が必要だ。過度な負荷がかかれば脳は強い緊張状態になり、眠る時間になってもそれが落ち着かなくなる。そうなると疲れているはずだし眠いはずなのに眠れなくなってしまう。

いわゆるブラック労働で過酷な心身のストレスが活動中にかかっている方がむしろ不眠となってしまうのはこのためだ。

また特に寝る前には心身に過度な負担をかけないように注意しないといけない。

例えば寝る前に食事をガッツリ食べたり、飲酒したりは良くない。食事をすればその後数時間に渡り消化器官が一生懸命活動する。飲酒をすればアルコール分解のために肝臓と頑張らないといけない。睡眠中にこれではいくら寝ていても体は休めていないだろう。

寝る前の勉強・筋トレも実はあまり良くない。これは経営者や成功者など一生懸命な方がむしろやってしまいやすいことだが、脳や体が覚醒してしまうため、その後にリラックス状態に入りにくく、質の良い睡眠が取れなくなる。

寝具にこだわる

上記のことを気をつけた上でだが、特に歳を重ねてからは寝具にもこだわったほうがいい。

一番はマットレス、次に枕だ。

人によって合う合わないがあるとは思うが、個人的にはマットレスにはある程度のお金をかけたほうがいいと思う。高ければ高いほどいいというわけではないが、経験上10〜20万くらいのものを使うとだいぶ違う。

私自身、20代前半の頃はそこまでお金があったわけではなかったので、数十万するマットレスにお金を払うのに抵抗があり、あまり寝具にはこだわってこなかった。

20代も終わりに差し掛かっていた頃、10代20代前半の頃よりは無理が効かなくなってきた。この頃はお金もだいぶ稼げるようになっていたので、1泊10万以上の高級ホテルにも良く泊まるようになっていたが、良いホテルに泊まった際に翌日のパフォーマンスが違う日があることに気づいた。

自分で理由を探したところ、自分に合ったマットレスを使っている高級ホテルに宿泊した翌日は体の疲れが全く違うことを突き止めた。

早速そのホテルのマットレスのメーカーを調べ、販売店で試し寝をし、購入した。それから明らかに仕事のパフォーマンスは安定するようになった。

この経験から私は寝具の中でも特にマットレスにはこだわるようになった。良い寝具に寝る機会というのは日常そんなにあることではないので、私は今でもホテルに泊まる際はなるべく質の良いホテルの良い部屋に泊まるようにしている。それが1泊20万だろうが30万だろうが、それ以上であっても、良いマットレスに出会えてその後の睡眠の質が一段階あがるのであれば、極めて安い投資だ。仕事のパフォーマンスが少し上がった状態がこれから何十年も続くなら、それは何十億もの価値があることだからだ。

次に枕だが、枕は私自身は高いものでなくてもいいと思う。マットレスの経験があったので一時期枕もかなり探した。何万もする枕を何個も買ったがあまり違いは分からず、結局は普通の数千円の枕を使っている。ただ、個人差はあるかもしれないので、首の痛みとか肩の凝りとかがあまり取れていない場合は合う枕を探してもいいと思う。

あとはかけものだが、これは値段ではなく、季節に合ったものをちゃんとその時期その時期で使うこと。面倒だからと一年中同じ掛け布団を使ったりしてはいけない。

夏は気温も高く、湿度も高いので薄く、吸湿性の高いものを。冬は気温・湿度も低いため、保温性に優れるものを選ぶと良い。

寝室の環境も大切だ。適切な温度・湿度になるようにエアコン、加湿器は必須だ。

また好みもあるとは思うが、睡眠に良いアロマをほんのり香らせておくのも、多少だが睡眠の質をあげると言われている。

寝つきを良くするためには体を適度に冷やす

寝る前には適度に身体を冷やしてあげる必要がある。

私たちは体温が下がると眠くなるようにできている。よく映画で、雪山で遭難すると眠くなってきて「寝ちゃだめだ、ここで寝たら死ぬぞ!」なんてシーンがあるが、人は体温が下がると眠くなる事をよく表している。

体温が下がると私たちの身体は眠るための準備を始める。その状態で睡眠に入れば、質の良い睡眠が得られる。

これを実現するためにまず行いたいのが入浴だ。温かいお風呂に入って身体を温めれば、その後お風呂から上がった後は体温は徐々に下がり始める。

お風呂上がりは風通しの良い場所や、少し涼しくした部屋で過ごせばよりよい。

注意点として適度な温度(40度前後)のお風呂に入るのはその後の体温を自然と下げていくために有効だが、熱々のお風呂に入ってしまうと身体はびっくりしてしまい、むしろ覚醒状態になって眠りにくくなってしまうため、お風呂の温度はほどほどの温度にしよう。

睡眠薬は不眠症の人にはいいけども…

現代社会では不眠に悩んでいる方は多く、そういう方の中には睡眠薬を使っている人もいる。

このような睡眠薬を使うのはどうなのか?

実は睡眠薬というのは強制的に眠らせる力はあるものの、眠りの質を改善させる作用はない。

一部の抗うつ剤や抗精神病薬には深部睡眠(深い眠り)を増大させる作用が報告されていたりもするが、基本的に睡眠薬は眠りの質は上げないと考えておくべきだ。

そのため、ある程度眠れている人が更に眠りをよくしようと考えて睡眠薬を使うというのは間違っているということになる。

深部睡眠を増やすお薬は使う価値があるのか、というとそれも何か病気にかかっているわけでなければ、眠りの質を上げるためだけに服用するのはお勧めしない。

そもそも抗うつ剤はうつ病や不安障害などの治療のために用いられるものだし、抗精神病薬は統合失調症などの疾患の治療に用いられるものだ。その疾患を改善させる作用の副次的なものとして深部睡眠を増大させる作用があるのであり、深部睡眠のみを増やすお薬ではない。

病気でもないのにこれらのお薬を使うのは別の弊害が出てくるリスクもあり、医師の許可がなければ使うべきではない。

ただし私は睡眠薬の使用が悪いと言っているわけではない。

横になっても朝まで眠れなかったり、寝つくのに数時間かかるようなら、深部睡眠が増えないとしても睡眠薬で眠った方が全然マシだ。症状が強い間は主治医とよく相談して睡眠薬を使うのもいいと思う。

昼型・夜型を無理に変えようとしない

健康的な生活といえば、早寝早起きだというイメージを持つ人は多いだろう。昔から早寝早起きがいいことだと私たちは教えられてきた。

しかし、最近はこの常識は万人に当てはまるわけではないことが分かってきた。遺伝的に昼型の生活リズムの人もいれば夜型の生活リズムの人もいるのだ。確かに昼型の方が多いため、大半の人にはこの常識は当てはまるのだが、全員に当てはまるわけではない。

むしろ夜型の人が無理に昼型の生活をすると睡眠の質も悪くなるし、活動時のパフォーマンスも発揮できなくなる。

実は私自身夜型で、昔は昼型への矯正を強制され、苦しんできた。朝起きるのが遅いのはだらしないから、怠けているからだと怒られたことも多々ある。

子供の頃は大人からそう怒られれば、治さないといけないと信じて頑張って治そうともした。しかしどうしても治らない。朝、みんなと同じ8時半に通学するのが辛くてたまらなかった。授業中もよく寝てしまい、学校の成績はパッとしないもので平均的な順位しか取れなかった。

でも不思議と夕方くらいから頭が活発になってくる。夜は昼とは比べ物にならない集中力を発揮できた。

これは怠けとかそういう問題じゃないんじゃないかと高校生くらいから感じ始めた。転機は大学受験の時だった。現役時代にボロボロの結果だった私はどうしても医学部に行きたくて浪人したが、浪人生活でもなかやか予備校で集中できなかった。

6月ごろ、意を決して予備校を辞めた。それからは昼に起きて、夜中3-4時に寝るという生活に変えた。昼から夕方までは図書館で一人で勉強して、夜は家で黙々と一人で勉強を続けた。

不安もあったが、確実に手応えは感じていた。10月ごろから55しかなかった偏差値が60を超え、1月には70を超えた。そして問題なく医学部に合格した。

この経験から私は夜型は怠惰ではなく特性の一つなのだと確信した。大学に入ってからも午前の授業は休めるだけ休むことに最初から割り切り、その分夜に1人で勉強した。

結果は驚くほどで、もちろん大学も卒業したが、勉強の合間にもともと興味のあった起業もして、ある程度の結果を出した。今思えば大したことない小さな会社しか作れなかったが、それでも大学生時代の年収は1000万をゆうに超えていた。私の経営者としての基本はこの時に作られた。

最近になってやっと、体質的に昼型の人と夜型の人がいるらしいという論文や研究結果が少しずつで始めたが、これでやっと夜型の人が不遇な思いをしなくて済むと嬉しく思う。

また、高校生の時に自分の感覚を信じて良かったと思えた。もし自分が「朝起きれないのは自分が怠けた心を持っているから」とずっと思っていたら、私は今でもうだつの上がらない社会人だったと思う。

今の社会は昼型の人が過ごしやすい前提で作られている。なので昼型の人は特にそこを気にする必要はない。

もし自分は夜型なんじゃないかと思う人がいたら、できる範囲で生活を夜にシフトするといいだろう。もちろん全て自分の理想通りにシフトすることはできない環境の方もいると思うが、出来るところだけでも変えてみるとそれだけ高いパフォーマンスが発揮できるようになるはずだ。